やはり誰しも一回戦だけは勝ちたいもの。
ところが、二回戦を迎える時の心境はどうでしょう。
心の中に、とりあえず1試合勝ったから、ここで負けても、まぁ、いいじゃないか、って、負けてもいい理由が現れる。
もし開会式まで勝ち上がったら、開会式まで進んだんだから上出来だよ。ビデオにも写るよ。
もし準決勝まで勝ち上がったら、トロフィー持って帰れるんだから上出来だよ。3位入賞だよ。すごいよ。
もし決勝まで勝ち上がったら、ファイナリストだよ。ここで負けても準優勝だし。よくやったよ。
みたいな感じで、すぐ戦いをやめようとする。
負けてもいい理由は、そこらじゅうにあります。
次の相手は前年度のチャンピオンだ。負けても仕方ない、とか。
今日は朝から熱っぽい、とか。
昨日はよく眠れなかった、とか。
今大会前は、仕事が忙しくて思うように練習できなかった、とか。
あそこをケガしてるここをケガしてる、とか。
だいたい、俺はこの大会に出るのはイヤだったのに、支部長に言われて仕方なく出た、とか。
負けても仕方ない理由を、知らず知らずに口にして、自分自身をどんどん洗脳します。
なるほど、俺はケガをしてるから負けてもいいんだ。 ケガをしてるなら負けるのは仕方ないことなんだ。
ケガをしてる選手が負けるのはむしろ正しいことなんだ。
じゃあ、俺はここで負けていいんだ。
という思考が完成して、やっぱり負ける。
知らず知らずに精神を蝕んでいく、こいつら『負けてもいい理由』。
こいつらのことを仏教では『魔』と呼ぶのです。
魔に勝つにはどうすればいいか。
そりゃもちろん魔と反対に作用する力を利用するしかない。
負けられない理由を集めるしかない。
勝たなきゃならない理由を集めるしかない。
よく、『優勝したいと思う気持ちが一番強い選手が優勝する』といいますが、勝たなきゃならない理由がたくさんある選手は、途中で試合を捨てない。
もちろん誰しも迷う瞬間はあるでしょう。
でも、勝ちたい理由、負けられない理由が全身を包み込み、底力が発揮できるのです。
皆様の勝ちたい理由は?
負けられない理由は?
それを集めて試合に臨んでください。
ひるがえってわたくしの現役時代を考えても、負けてもいい理由が正当化された瞬間、全試合負けてます。
逆に、勝ちたい理由が多い時はほとんど負けてない。
わたくしが現役のころ、とにかく館長に褒められたかった。
だから勝ちたかった。
白蓮会館の全日本タイトルが他流派に持っていかれるのがとにかくイヤだった。
だから負けられなかった。
一緒に練習してきた先輩や仲間の応援に結果で応えたかった。
勝つしかなかった。
すっかり負けてもいい理由が増えて、いくら探しても勝ちたい理由が見つからなくなった時、人は引退するのです。